さいごに

 日本のかなりの街へ行けば、町の中心地に城があり、しかも天守閣や天守閣風の建造物に遭遇する場合もあります。このことが、日本人のお城への興味を呼び起こす第一歩になると思います。 しかしながら、今まで述べてきたように、お城=天守閣だけでないことは、その街を訪れることによって理解できると思います。

 

 ・まず、天守閣風の建物含めて天守閣に登城すれば、そこに至るまでに石垣や土塁、堀、その他の建造物に興味が膨らんで

  きます。

 

 ・天守閣(天守閣風含めて)内の展示物を見れば、城郭全体の構成、天守閣以外の建造物の存在、城主(殿様)の生活、殿様

  を支える武士達の生活にも興味が広がってきます。

 

 ・また、その殿様を支配していた江戸幕藩体制とはどのようなものだったのだろうかとの疑問や興味も沸いてきます。

 

 ・天守閣などの建造物から眺める街並みを見下ろすと、古い町並みや武家屋敷、町屋、寺院町を含めた城下町が見渡せて、そこ

  に住んでいた武家や庶民の生活が思い描けるし、その地の歴史を勉強することができます。

  特に江戸時代では、大名や代官などの管理者単位で行政内容が異なっていたようですので、隣接住民の生活やその風習、言語

  までも異なっていたことにも興味が惹かれます。

 

 ・また城郭建築が、他所へ移築されたお城の遺構として、移築先で門や屋敷などに旨く馴染んで、存在感を果たしています。

  しかしながら、逆にその遺構が、もしも本来の場所へ戻され復元されたら、現存している城郭建築との相乗効果を含めて、

  昔の城郭の姿に近いものになるのにとの思いを馳せることができます。

  また、既に復元、復興、模擬によって再興された新しい城郭建築とのハーモニーをも思い描くことができると思います。

 

 ・全く本来の形でない復興の姿や、模擬の姿で再築されている場合も多いですが、それはそれで、その地域の住民の心の拠り所

  であるモニュメントとして位置づけられ、それが息づく姿に、日本人の心の中に芽生えるお城というパワーを感じます。

  現存ではないですが、お城がその街に馴染んでいる或いは溶け込んでいることがよくわかります。

 

 ・このような状況から、特に最近では、江戸末期から明治初期にかけて映された城郭写真(古写真)を探し出したり、江戸時代

  の図面の発見、城跡の発掘による礎石などの実態調査を経て、それを城郭建築の復元の契機にしようとの動きが著しいです。

  しかも、本格的な木造での本物に近い復元建築が目指されていることは嬉しい限りです。

 

 ・城郭の楽しみ方は、多種多様、豊富で置くが深いです。天守閣で終わらず、網を広げて楽しんでもらいたいと思います。